2025/04/16 13:44
徐さんのCHINAウォッチ:第1回 10年目の「中国製造2025」を思う 
米中貿易戦の真っ只中にあります。貿易戦のきっかけの一つとされるのが「中国製造2025」。世界中の優秀な人材を誘致する「千人計画」と並んで「製造大国」から「製造強国」への躍進を10年間かけて達成することを目指して2015年に当時の李克強総理が同年の全人代で打ち出された中国版「富国強兵」計画と見られるが、提出から10年、目標の9割以上が達成したというシンクタンクの纏めが出ています。果たして…
中国の金融専門シンクタンク、「中国金融四十人論壇(China Finance 40 Forum)」が3月30日、上海で開かれました。シンクタンクの学術顧問で重慶市元市長を務めた黄奇帆氏が10年目を迎えた「中国製造2025」で掲げた目標の96%はすでに達成したと報告し、残りの4%も達成に近いとする演説を行いました。
黄氏に先立って、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(南華早報)は、昨年4月30日付コラムで、「中国製造2025」で掲げた約260項目の目標を検証した結果としてその86%がすでに達成したと報じています。
さらに、第2次トランプ米政権の国務長官を務めるルビオ氏が上院議員を務める24年9月に、「The World China Made」と題するレポートで、「中国製造2025」で掲げた10大目標の9つが基本的に達成し、電気自動車、再生可能エネルギー、造船、高速鉄道などの4分野では世界をリードし、残り5分野は「先駆者に向けて大きく前進した」と分析して、米国政財界を驚かせた論点を披露したのです。
余談だが、もともと対中強硬派で知られるルビオ氏で、第1次トランプ政権時に中国から制裁対象リストに指定されるものの、その「功績」もあってのことか、第2次トランプ政権発足時から国務長官に任命されているので、貿易戦でも中国と対峙しようとするトランプ政権の「意地」が伝わるものと勝手に推測しています。
そもそも、「中国製造2025」では、どのような分野で世界をリードしようとしているのでしょうか。以下はその掲げられた10大分野となります。
●次世代情報通信技術
●最先端デジタル制御機器や機械(ロボット)
●航空・宇宙設備
●海洋建設機械・ハイテク船舶
●先進軌道交通設備
●省エネ・新エネルギー自動車(NEV)
●電力設備
●農業用機械設備
●新素材
●バイオ医薬・高性能医療器械
10大分野のうち、残り一つ、農業用機械設備では米国のような大規模農業用機械は遅れているものの、ルビオ氏も認めているようにその他の分野ではリードまたは製造業で強い米国やドイツ、日本のレベルに近付いているとされます。
ところが、「千人計画」と同様、2019年頃から以降、「中国製造2025」は紙面から消え、ネットからも検索しないと出てこない隠れワードとなっていることに気づかれたのでしょうか。そして「新質生産力(新たな質の生産力)」というキーワードが中国関連のサイトに躍り出るようになり、今年1月DeepSeek(中国名:深度求索)のAIモデルが公開されると、中国の新技術がどこまで進んでいるのか改めて人々の注目の的となっています。
時として第2次トランプ政権が発足し、18年から続いた貿易戦が再燃したのです。「中国製造2025」は米国に取って脅威となっているのでしょうか。
■執筆者(徐学林)プロフィール
1983年、北京外国語大学卒業後、北京放送を経て来日。
名古屋市立大学大学院修了後、専門商社勤務を経て邱永漢氏に師事。
2012年に独立し、株式会社京華創業を設立。
中国やアジア各国で100社超の企業を訪問し、経済・市場情報を発信。
企業訪問記も順次掲載する予定。
内容についてのお問い合わせは<info@ashuir.com>まで。
中国の金融専門シンクタンク、「中国金融四十人論壇(China Finance 40 Forum)」が3月30日、上海で開かれました。シンクタンクの学術顧問で重慶市元市長を務めた黄奇帆氏が10年目を迎えた「中国製造2025」で掲げた目標の96%はすでに達成したと報告し、残りの4%も達成に近いとする演説を行いました。
黄氏に先立って、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(南華早報)は、昨年4月30日付コラムで、「中国製造2025」で掲げた約260項目の目標を検証した結果としてその86%がすでに達成したと報じています。
さらに、第2次トランプ米政権の国務長官を務めるルビオ氏が上院議員を務める24年9月に、「The World China Made」と題するレポートで、「中国製造2025」で掲げた10大目標の9つが基本的に達成し、電気自動車、再生可能エネルギー、造船、高速鉄道などの4分野では世界をリードし、残り5分野は「先駆者に向けて大きく前進した」と分析して、米国政財界を驚かせた論点を披露したのです。
余談だが、もともと対中強硬派で知られるルビオ氏で、第1次トランプ政権時に中国から制裁対象リストに指定されるものの、その「功績」もあってのことか、第2次トランプ政権発足時から国務長官に任命されているので、貿易戦でも中国と対峙しようとするトランプ政権の「意地」が伝わるものと勝手に推測しています。
そもそも、「中国製造2025」では、どのような分野で世界をリードしようとしているのでしょうか。以下はその掲げられた10大分野となります。
●次世代情報通信技術
●最先端デジタル制御機器や機械(ロボット)
●航空・宇宙設備
●海洋建設機械・ハイテク船舶
●先進軌道交通設備
●省エネ・新エネルギー自動車(NEV)
●電力設備
●農業用機械設備
●新素材
●バイオ医薬・高性能医療器械
10大分野のうち、残り一つ、農業用機械設備では米国のような大規模農業用機械は遅れているものの、ルビオ氏も認めているようにその他の分野ではリードまたは製造業で強い米国やドイツ、日本のレベルに近付いているとされます。
ところが、「千人計画」と同様、2019年頃から以降、「中国製造2025」は紙面から消え、ネットからも検索しないと出てこない隠れワードとなっていることに気づかれたのでしょうか。そして「新質生産力(新たな質の生産力)」というキーワードが中国関連のサイトに躍り出るようになり、今年1月DeepSeek(中国名:深度求索)のAIモデルが公開されると、中国の新技術がどこまで進んでいるのか改めて人々の注目の的となっています。
時として第2次トランプ政権が発足し、18年から続いた貿易戦が再燃したのです。「中国製造2025」は米国に取って脅威となっているのでしょうか。
■執筆者(徐学林)プロフィール
1983年、北京外国語大学卒業後、北京放送を経て来日。
名古屋市立大学大学院修了後、専門商社勤務を経て邱永漢氏に師事。
2012年に独立し、株式会社京華創業を設立。
中国やアジア各国で100社超の企業を訪問し、経済・市場情報を発信。
企業訪問記も順次掲載する予定。
内容についてのお問い合わせは<info@ashuir.com>まで。