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2025/03/11 08:53

売り継続か、世界株安連鎖を懸念 無料記事

◆11日の香港マーケットは、世界株安の連鎖が懸念される展開か。(亜州リサーチ編集部)
 外部環境はネガティブ。「トランプ関税」に端を発した貿易戦争のエスカレートや、米国の景気先行き不安がマイナス材料だ。米国が4日、対中追加関税を20%に引き上げたことに対する報復措置として、中国政府は10日付で、米国から輸入する大豆やトウモロコシなどに最大15%の追加関税を課している。ほか、カナダのオンタリオ州は10日、米国の対カナダ関税に対する報復措置として、米国向け電力価格を25%引き上げた。カナダ与党は9日、トランプ政権に批判的な元中銀総裁のカーニー氏を首相に選出。両国の対立が深まると懸念される。また、米経済情勢を巡っては、トランプ米大統領が9日、米メディアのインタビューで米経済のリセッション(景気後退)入りする可能性を問われた際、その可能性を排除しなかった。
 10日の米株市場は、投資家のリスク回避スタンスが強まり、大幅に下落。主要指標のNYダウが前営業日比2.1%安、ハイテク株比率の大きいナスダック指数が4.0%安と急反落した。NYダウは約4カ月ぶり、ナスダック指数は約6カ月ぶりの安値を付けている。個別では、アナリストが目標株価を引き下げた電気自動車(EV)のテスラが15.4%安。同社株は昨年12月中旬からの下落率が52%に達した。米株市場の不安心理を表すVIX(20を超えると不安心理が高まった状態とされる通称「恐怖指数」)は27.86となり、前日比で19.2%急上昇。昨年8月以来の高水準を付けている。欧州市場でも英国やドイツなど主要国の株式指数が全面安の商状だった。
 中国銘柄も急落。中国企業のADR(米国預託証券)で構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC)は3.6%安と反落した。主要な香港との重複上場銘柄では、ビリビリ(BILI/NASDAQ、9626/HK)が9.5%安、金山雲(キングソフト・クラウド:KC/NASDAQ、3896/HK)が7.1%安、阿里巴巴集団HD(アリババ・グループ・ホールディング:BABA/NYSE、9988/HK)が5.8%安と下げが目立っている。
 米債券市場では、米10年債利回りが5日ぶりに低下(債券は上昇)。米景気懸念が高まったことで、安全資産としての債券に買いが集まった。
 商品相場は、WTI原油先物が1.5%安と3日ぶりに反落し、金先物が0.5%安と続落。ロンドン金属取引所(LME)では、銅やアルミなど主要産品が売り優勢だった。
 一方、内部環境には好悪材料が入り混じる。中国のデフレ圧力が高まっていることは不安材料だ。9日に公表された2月の中国物価統計では、消費者物価指数(CPI)が前年同月比でマイナス0.7%となり、昨年1月以来のマイナスに転じている。生産者物価指数(PPI)のマイナスも続いた。一部のアナリストは、内需は依然として弱く、中国のデフレ圧力はこれからも続くとの見方を示している。半面、経済対策の期待感が強まっていることはプラス材料。全国人民代表大会(全人代、国会に相当)はきょう11日に閉幕し、今年の成長目標「5%前後」とすることや、対GDP財政赤字比率を4%に引き上げる(昨年は3%)ことなどが承認される見込みだ。景気浮揚のため、積極的な財政出動で、内需を拡大する方針が示されている。
 こうした中、本日の香港・本土マーケットは苦戦を強いられそうだ。中国の政策に対する期待は根強いが、世界的な景気不安が相場の重しとなる。世界株安の連鎖も懸念されよう。


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